子供たちに伝わるように。(2021年1月発行)

ほぼ毎月、企業や学校からご依頼をいただいて、講演に出かけています。今年は新型コロナウイルスの影響で依頼が減っていたのですが、11月頃から、また呼んでいただく機会が増えてきました。これまで200回近く講演したうち、150回ぐらいは職業訓練中の方々、または職業体験に行く直前の中高生に向けての講演です。そこでは「仕事とは?」「求められる人材とは?」といった内容が求められます。私は「講演の依頼は絶対に断らない」と決めており、そのことが依頼が増え続ける理由だと思っているのですが・・絶対に断らないと決めたきっかけがあります。まだ講師に呼ばれ始めたばかりの頃、ある講演で、聴講された方から12ページにも及ぶ感想文をいただいたのです。その内容にとても感動しました。その時に「私が話すことで、もしかしたら誰かの人生の転機となるのかもしれない」「もしそうだとすれば、そのチャンスを自分から逃すのはやめよう」と感じたのです。以来約10年間、依頼を1度も断ることなく、1回1回の講演に想いを込めてお話をしてきました。

先日、いつも講演に呼んでいただくコンピューター関係の専門学校で講演をしました。そこではいつも職業訓練の方に向けて話すのですが、初めて現役の学生さん50名に向けて話す機会をいただきました。後日いただいた感想文の中に、こんな一文があったのです。「仕事について、こんなに楽しそうに話をする大人に初めて出会いました」私は思わず「伝えたかったことはそれだったんだよ!」と、叫びたくなりました。そうなんです。「お父さんもお母さんも一生懸命働いて、もしかすると家では疲れた顔を見せているかもしれないけれど、その様子だけを見て仕事は辛く厳しく、つまらないものだとは思わないでね」と若者たちにはそのことを伝えなければ!と感想文を読んで気付きました。

若者たちが希望する仕事の条件として「休みが多く残業がない」ことが第一になっています。悪いことではありませんし、今や当然のことです。ただ、それぐらい彼らにとって仕事というものが「できるだけ離れたい、辛そうなもの」であるならば、働く前から持つイメージとしては、あまりに寂しいものです。これは大人が「仕事って大変だけど、だけど楽しいんだよ」という背中を見せていないからなのかもしれません。私はこれまで多数の講演をこなし、話す内容も少しずつ向上させてきたつもりでしたが、大切なのは内容ではなく、気持ちが伝わることですね。仕事とはなにか?といった心構えを教えるよりも、仕事の楽しさが伝わることなのだなと、この感想文に教わりました。それは何よりも、「早く社会人になりたい」と学生たちに思ってもらえるような社会人であればならない。もちろん我が社のスタッフにも、そして数年度に社会人にあんる息子にも、大変な仕事をめちゃくちゃ楽しむ姿、人生の転機になるような大人の姿を見せ続けたいと思いました。