種のお話【2023年1月発行】

冬に入り、天気に恵まれなくなってくると、堆肥散布や耕運などの土づくり作業が思うように進まなくなってきます。

そういった時に、地味ながらも大事な作業が「種取りと種選び」です。発芽率が高く元気に育つ種を選ぶことは、次の作付けのためにとても重要です。エゴマもモロヘイヤも、良い種は色や大きさなどといった見た目でわかりますが、膨大に取れる種の中からそれを選ぶのは根気のいる作業です。出雲の地で育ったDNAを繋げていくことで出雲の気候風土に合った作物になっていくことを期待して、

種についてはまだまだ研究の余地がありますが、自社種取りを続けています。

種といえば「モロヘイヤの種には毒性がある」という話を聞かれた方も多いかと思います。結論を先に申し上げると、熟した種のみに含まれるものであり、若い葉や茎には全く含まないものですので、ご心配には及びません。

栽培後2ヶ月ほど経ち、11月中旬以降に取るモロヘイヤの熟した種子や固くなった茎などに「オリトリサイド」や「ストロファンチジン」といった成分が含まれていることは、以前から生産者の間では広く知られていることです。

これらは、強心薬としても使われるように薬にもなる成分ですが、大量に摂ると毒にもなるというものです。

種を食べて「牛が死んだ」「人の具合が悪くなった」というのは単なる噂話ではなく、実際に起こったことです。これらは収穫が終わった後に「もったいないから残ったものも食べてしまおう」というお気持ちから起こった事故ですが、農家としては避けていただきたい行動と言えます。

種のお話しは栽培よりも地味なので今までお伝えしませんでしたが、種には植物の一生をかけたものが詰まっていて、まだまだ研究の余地がある貴重なものだと思っています。