自然を愛する人たちに囲まれて(2020年11月発行)

9月に女性農縁スタッフ2名が誕生日を迎え、二人ともめでたく21歳になりました。

入社3年目の飯塚京美は先日、トラクターデビューをしました。彼女には知的障がいがありますので、トラクターを運転するのはもう少し時間が必要だろうと考えていましたが、やらせてみたら一体何が心配だったのだろうと不思議に思うぐらい、とても上手に運転ができました。飯塚のトラクター後ろには、作物を刈り取った後に出てくる虫やミミズを狙う鳥たちが、チョンチョコチョンチョコついて行っていました。飯塚は、鳥たちがついて来て、まるで自分が鳥たちに慕われているようだったと、とても喜んでいました。

同じく21歳になった今年入社の渡部は虫やカエルが大好きで、畑で幼虫を捕まえてきては皆に見せびらかし「これはアカタテハという蝶になるんですよ♪」など嬉しそうに話しています。最近では農園事務所にイモムシ図鑑なるものが常備され、他のメンバーも興味深げにのぞきこんでいます。昆虫があまり得意ではない私は、それを横目で見ながら少し引き気味になってはいるのですが、モロヘイヤやエゴマを育ててくれるのが虫、鳥、自然を愛する優しいスタッフということはとても嬉しいことです。そんな中、稲刈りをしようと出かけると、珍しく田んぼ沿いの道路にズラッと自家用車が止まっていました。何事かと思ってみると、そこにはコウノトリが!しかも、うちの田んぼに降り立っているのです。

日本の野生のコウノトリは既に絶滅しましたが、兵庫県豊岡市で人口飼育が行われ野生復帰に向けた放鳥が行われています。出雲市の隣、雲南市も放鳥されたコウノトリが飛来し繁殖しており、このコウノトリを守ろうと、餌を増やすためなどの環境整備が地域を挙げて行われています。コウノトリが弊社の田んぼに来たその日は私の人生初めての稲刈り、初めてコンバインを動かすという日でもありました。気持ちに余裕がない私、実はこのコウノトリウォッチャーの皆さまを迷惑に感じたりしたのです。「稲刈りをするので車を退けてください!」と言いたい気持ちもありましたが、この方々はコウノトリを一目見るために家族連れで来られたのだと思うと、違う田から稲刈りを始めざるを得ません。毎日の農園朝礼で、自然を愛するスタッフたちからコウノトリやヤンバルクイナなど、希少な生き物を一生懸命守っている人たの話を頻繁に聞いていたので、これまで野生動物の保護とかに心が動いたことのない私にも、それを意識する気持ちが生まれたのかもしれません。トラクターのこと、イモムシのこと、コウノトリのこと・・心が洗われるような出来事が続き、理屈っぽい私もそのうち彼らのようになれるのかなと、そんな不思議な感覚に囚われはじめています。