通心販売(2020年10月発行)

連日35度超えの真夏日が続く9月初旬に、この原稿を書いています。先々月あたりはちょうど長い長い梅雨の頃で、植え付けも進まず「雨ばかり降って晴れ間が欲しい」とぼやいていましたが、あれから2ヵ月経ち、台風でも雨すら降らず(被災された方には申し訳ない言い方ですが)「ちょっとでもいいから雨が降ってくれ」と願っている状況です。

私が子供の頃の夏といえば、昼間暑くても夕立ちが来ると涼しくなり、1日の中で暑い、涼しいのお天気の起伏がありました。しかし、近年の8月は連日35度超えの猛暑日なのに夕立は来ず、ひたすら太陽を浴びる日が続いています。最近ではこういうのを異常気象とさえ言わなくなり、「今年の夏もまた、猛暑です」となっています。

私は今年、大半を農園で過ごしており、うあだるような暑さの中での作業に励んでいます。農園スタッフも、このような厳しい暑さのなかでも愚痴一つ言わず、頑張ってくれています。そんな日々の中で、前々回のオーガニックライフの、「梅雨が長くて苦しんでいる」といった内容の記事を読んでくださったのだと思いますが、兵庫県にお住まいのお客さまから、労いの言葉とともにお菓子が届きました。社員一同本当に喜んでおり、中でも今年入社した農園スタッフの渡部は、「涙が出そう」といって目をうるうるさせていました。農園スタッフはお客様と直接会話をしたり、触れ合ったりする機会はほとんどないのですが、自分たちのことも気遣ってくださっていることがとてもうれしかったようです。

我が社の経営理念は「農業を中心に健康を追求し、お客さまに感動を提供すえう」ですが、感動を提供したいのに、逆にこちらがお客様からいただいている感覚です。長く通信販売を行っていると、お客様とお手紙を交わすこともありますし、絵手紙で近況をお知らせくださったり、心遣いの御品をいただいたりすることもあり”通信”というより”通心”だなと感じます。

「~お客さまに感動を提供する」という経営理念は15年ほど前に定めたもので、当時は30年は変えずにいられる不動を経営理念のつもりでいたのですが、人の心や関係性というのは頭の中で想像していあTほど単純ではなく、もっとずっと深く広く複雑なものだと、今は感じています。

すぐにお菓子を贈ってくださったお客さまに御礼の電話をしましたが、「何かお返しをしようと思っているのだろうけど、そういうのはいいのよ」と、お客さまのほうから先に言われてしまいました。感動を提供するどころか、温かく見守られているなと、胸が熱くなりました。

通信販売という形態は、お客さまにお会いする機会がそうそうありませんが、お会いできなくても人と人との関係は築けるものなのだなと実感する日々です。