楽しいことは疲れない(2020年9月発行)

先日、私とJA(農協)職員さん、ある農家さんの3人で話をしていました。

その農家さんは、弊社の委託で今年からエゴマ栽培を始められた方で、初めてのエゴマ栽培の何もかもが楽しみであり、同時に心配も多いという様子で1日3回ぐらい畑にエゴマを見に行くと話されました。

JAの職員さんは「エゴマは1日に何回も見に行く必要はないですし、そんなに気にかけていると疲れますよ」と忠告をされていました。

それを聞きながら私は「いやいや、多分この人は疲れない」と心の中で思っていました。人に言われて見に行く、義務感で見に行くのは疲れますが、見に行きたくて畑に行くのはそれ自体が楽しいので、疲れたりはしないと思います。幼い我が子がすやすや眠っているかを頻繁に見に行くようなもので、様子を見に行くこと自体が幸せで、心配ごとが何一つ当たっていなければ、それはそれで安心なのです。

翻って今年初めて稲作に挑戦している私も、長い梅雨に翻弄されながら、やはり1日に何度も田んぼを見に行っています。今の時期(原稿を書いているのは8月中旬)は田んぼから水を抜いて一旦田んぼを乾かし、肥料を入れる時期ですが、長い梅雨のために一向に水が抜けません。乾かないうちに田んぼに入ればぬかるみにはまってしまいます。

田が乾かず肥料がやれないことがとても気がかりで、用水路から水が漏れているんじゃないか、きちんと排水ができているだろうかと、1日数回は田んぼの様子を見に行っています。しかし、まったく疲れを感じることはなく、「連休だから、田んぼに行くか」という感じで、初体験の稲作が私の楽しみの一つとなっています。

稲作の楽しみは、他にもあります。

稲作は水の管理がとても重要で、常に水の音に耳を澄ませています。「パシャパシャ」「チョロチョロ」「サヤサヤ」といった水の音を聞き取ることで様々な様子を感じ取るのです。この感覚は畑作にはないもので、自分の暮らしの中の重要な部分に「水の音」が加わるという、55歳の初体験に、何とも入れない心地よさを感じています。

まだまだ日常の暮らしのちょっとしたことにの中に、新しい発見や喜びが潜んでいるものだなと嬉しくなります。

前出のエゴマ農家さんは70歳を過ぎていらっしゃいますけれど、初めて栽培する作物の生育体験に楽しさを感じていらっしゃいます。私も何歳になっても、身近なことに幸せを見つけるようでありたいと思います。