「任せる」と「無関心」の差(2020年8月発行)

今年は、農作業に遅れが生じています。4月に気温が上がらなかったことでタネの発芽率が低く、播き直しを行ったので、毎年今頃は苗の畑への植え付けが完了している時期ですが、今年はまだ半分しか終えられていません。

そうこうしているうちに梅雨に入ってしまい、降り続く雨のせいで畑での作業ができなくなりました。雨が止んでも足元がぬかるんでいれば機械が入れず、かといって足元が良い時に倍の速さで作業ができるというものでもなく。

さらに、雨が降ったあとには雑草が育ちます。作業ができない日が数日続くと、作物を超える速さで雑草が伸びます。移植して間もない小さな苗は雑草に負けてしまうので、作業ができない間に草刈という作業が増えます。

作業に優先順位をつけ、急ぐものから手をつけるのですが、遅れれば遅れるほどやるべき作業が増え、待てば待つほど、すべての優先順位が高くなっていくのです。自然相手の仕事、天候に左右されるされる仕事ならではのジレンマに陥り、努力だけではどうにもならないことがあるということを思い知らされています。

そんな状況下ですので、近年はスタッフに仕事を任せて農園に出る回数がめっきり減っている私も、今年は積極的に出て作業をしています。するといろいろなことが見えてきました。

例えば本来の機能を発揮していない、不調の機械をそのまま使い続けていたということに驚きました。農業機械の中には精密でとても故障しやすいものがあります。故障とまでいかなくても、不調に陥った機械が複数台あり、それをスタッフは騙し騙し使っていたのです。本来は人間の力が及ばないところに機械にフォローしてもらうべきものなのに、機械の不調を人力で補うといった、実に本末転倒なことが現場では起こっていました。「なぜ不調なままで使っているだ?」と疑問に思い聞いてみたところ「修理すればいくら、買えばいくらと高額なことを知っているので・・」という答えでした。しっかりメンテナンスをしていれば起きなかった不調だという反省もあるのでしょうが、数十万、数百万かけるならば人力で補おうと我慢していたのです。これは本当に申し訳ないと思い、すぐに買え替えました。普段から「何でもいってね」と言うだけでは足りなくて、自分からスタッフの中に入っていくことが大切なんだと、改めて実感した出来事です。

任せるといれば聞こえがいいですが、任せ続けて無関心になっていたのではないかと思います。任せることには愛がありますが、無関心には愛がありません。似ているようで真逆なことを、いつの間にか自分がしていたんだと猛烈に反省しています。農園の進捗に遅れが出たのは良くないことでしたが、遅れていたことが気付きを得る機会になったことは、長い目で見ればよかったのだと。いや絶対に良いことに変えていこうと思っています。