有機栽培について(2021年3月発行)

有機JASとは農林水産省が認定している「有機JAS」規定の条件を満たした栽培方法です。農薬や化学肥料などの化学物質に頼らない、太陽・水・土・そこに住む微生物など自然の恵みを生かした栽培方法のことを指します。

農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS規格)による、有機食品作りのルールは、『種まき又は植え付けする2年以上前から畑の土に禁止された農薬や化学肥料を使用していないこと』『栽培中も化学物質による汚染がないこと』『畑や施設・用具などにも化学物質の汚染や飛散混入がないこと』など厳しい決まりが多くあります。この規格をクリアし検査認証を受けた作物や加工品だけが「有機野菜」「有機○○」「有機栽培」「有機農産物」「オーガニック」と、表示することを認められています。

現在、いづも農縁は出雲地方に広がる6.2haの有機JASの認定を受けた農園でモロヘイヤ・えごまの有機栽培を行っています。

有機JAS認定されている農産物は、現在日本で全体のわずか0.6%と言われています。農薬や安価な化学肥料が使えない為、草取りや虫取りなどの手間と時間が多くかかり、また病害虫が発生しやすい為、どうしても生産性が低くなってしまいます。しかし、野菜や作物が元気に育つために科学的なものは必要ありません。科学的なものを使わない上で、野菜が育つ環境を整えることが農家の技術力だと捉えています。そして、その環境下で育った元気な野菜をお客さまにお届けするために野菜づくりに励んでいます。

私たちは有機JASの認定を受けているから、規格通りであるからという理由で安心・安全であると思ってはおりません。例えば、農薬を使わなければ作物にとっては虫から襲われる危険が生じます。そうなると虫を避けるために、植物が自分の身体のなかに「天然の農薬」を作ることがあるという研究もあり、虫だけでなく人間にも悪いものである可能性があります。無農薬でも虫に蝕まれ放題の栽培方法では、まったく安全とは言い切れませんし、規格や規程で決められているものを守るだけでは、安心できる野菜が作れるものでもないと考えています。

規格を守るという以上の、有機農家としての誇りを持ってお客様に送り出せる製品にしていかなければなりません。目には見えず、表面に現れないものを大切に考え、私たちだからできる独自の、より安全・安心または、より役に立つ野菜作りをしていくことを目指していきます。

当社が有機栽培をする大きな理由は「元気に育つ野菜が元気な生命力を持ち、それを食べる人たちに元気な生命力を与える」と考えるからです。自然は大変複雑で、しかも絶妙なバランスがとれています。例えば、除草剤を使うと草がなくなり、草刈りという仕事が大きく軽減されて楽になります。しかし、除草剤を使うことで草だけでなく土の中にいる多様な生菌をほとんど死滅させ、生命の循環システムが崩れてしまいます。

また、元気な生命力を持つ野菜を育てるには、旬の時期に育てるのが一番です。例えばホウレン草は冬が旬の野菜ですが、品種改良を重ねたり、ハウスで栽培したり一年中スーパーに並んでいますが、味や栄養素が旬のものに全く敵わないのはご存知のとおりです。

「持続可能な農業」であり「循環型の農業をしながら、永く続けていける農業をする」というのがもう一つの大きな理由です。

例えば、田んぼや畑に化学肥料を入れると、肥料の三要素であるチッ素、リン酸、カリウムといった栄養素により作物が育ちます。ただ無機質なものを土に入れても土自体は育たないので、ずっと入れ続けなければいけません。一方、有機の堆肥を入れると、土中に数多くいる生菌が活発に動き、土がいわゆる団粒構造になって保水性や保肥性や通気性を持つ効果があり、いつでも作物が育つ状況の土になります。有機栽培を行うことで、よい土を残していくということに意味があるのではないかと思います。

また、農薬を使い続けると、虫は命を守るために農薬に対する抵抗ができて強くなります。虫が強くなるとそれに伴い農薬も新商品が必要になってくるのですが、こういうことをこの先ずっと続けて行った時にどういう状況になるのか不安が募ります。

また、日本の食料自給率は40%を下回るうえ、国内で流通する化学肥料の原料は全て輸入に頼っています。有機栽培という農法でただちに解決できるという訳ではないのですが、自然の循環システムを、出来る限り守っていきたいのです。元気な野菜作りを大切にしながら、自然が循環していく環境を大切にする。この両立が有機農業の意義であり、結果として期待されている安心・安全に繋がるのだと考えています。