消化器の働き ~睡眠とホルモン~【2024年6月発行】

前回は、ストレスに関わる2つのホルモン「ノルアドレナリン」と「ドーパミン」を紹介しました。そしてこの2つのバランスを取っているのが「セロトニン」であることを説明しました。

今回はこの「セロトニン」のことをもう少し詳しくお話ししたいと思います。セロトニンは、睡眠や目覚め、季節のリズムやホルモン分泌のリズムと深く関わっています。リズムが狂うと精神的にも肉体的にもよくない影響が起こるのは必然です。実はここから説明を進めるにはもうひとつ「メラトニン」というホルモンを加えなければなりません。横文字が多くて複雑になりますが御容赦ください。メラトニンは、人を自然な睡眠へと誘う働きをし、セロトニンは睡眠の質を上げる働きをします。そしてこの2つのホルモンは全く別のものではなく、朝から昼に分泌されたセロトニンが夕方から夜にかけてメラトニンに変化していくのです。つまり、朝の明るい陽射しを感じることでセロトニンが順調に分泌され、それが原料となって暗くなるとメラトニンに変化し、それによって夜に眠れるようになるのです。日光が減る冬季にはセロトニン不足によるうつ病「季節性情動障害」が発症するというほど、太陽光と精神にはつながりがあります。

現代社会ではプライバシーの観点からカーテンを閉め切って生活したり、夜も明るいことが多いので、体内時計にとっては普通の生活でも昼夜の区別が難しくなっているのです。朝はカーテンを全開にしたり、散歩したり、通勤時は日の当たる道を歩いたり、太陽光を浴びることで体のスイッチが入ります。とにかく明るいうちにセロトニンをつくって夜のメラトニンを蓄えることが、熟睡や疲労回復に繋がっていきます。