いづもの国の和スイーツ(2021年12月発行)

このコーナーではこれまで、葡萄農家さんや柿農家さんをご紹介してまいりましたが、出雲地方にはたくさんの果樹農家さんがいらっしゃり、苺や梨、無花果や栗、りんごや梅など、さまざまなフルーツが作られています。出雲地方で作られたフルーツをたくさんの人に食べていただきたいと、そのフルーツを使い素敵なお菓子を作っていらっしゃるスイーツの店があります。

今回は出雲市にある和スイーツの店『いとおかし』を訪ね、オーナーご夫妻のうち、奥様の石田 玲子さんにお話を伺いました。

あけみ「私は、こちらの焼き菓子を何度か食べたことがあるのですが、和テイストの中に洋があり、出雲のイメージにぴったり♪と感じました。出雲で和スイーツの専門店は少ないと思いますが、こちらではどうして和スイーツのお店を始めようと思われたのですか?」

石田さん「私の実家が和菓子工場を営んでおり、この店をオープンする前に主人と私はその家業を手伝っていたことから、和菓子がベースのお菓子の店になりました。

私は子どもの頃から和菓子も洋菓子も大好きで、食べ歩きやお取り寄せをしながら、いつかこんな素敵なお菓子を作りたいと夢見るようになりました。主人と結婚してからは、そんなお菓子の店を持つことが二人の夢となりました。

令和元年7月、その夢が叶って和スイーツの店『いとおかし』をオープンすることができました。当時の店舗は実家の菓子工場の一角にあり、工場の仕事の傍ら、自分たちの店で『ばたーどらやき』や『パウンドケーキ』など、手作りの和スイーツを販売していました。しかし、店舗の場所がわかりにくかったこともあり、オープンした頃はあまり売れませんでした。それでも一人でも多くの方に私たちのお菓子を食べていただきたいと、SNSで情報発信を続けていました。

ある時、『桃タルト』と『シャインマスカットタルト』を作り、その写真をSNSにアップしたところ、近所だけでなく遠方からもたくさんのお客さまが来てくださり、フルーツを使ったスイーツの人気に驚きました。

それ以降、フルーツを使ったスイーツをメインにしたところ売り上げが伸びていき、スイーツの生産がだんだん追いつかなくなりました。

家業と自分たちの店の両立がむずかしくなったので、今年5月に夫婦で『いとおかし』に専念するため、今の場所に店を移転オープンしました」

あけみ「こちらの桃タルトが会社のお楽しみ会のおやつとして登場したことがありますが、タルトが登場した瞬間、その見た目のインパクトでみんなから『わーっ』と歓声が上がりました。ひと口食べたらとってもジューシーでちょうど良い甘さに泣きそうになり、タルトに使われている桃が出雲産と聞き出雲にもこんなにおいしい桃があるんだ!と驚き、1個のタルトにいろいろな魅力が詰まっていて感動しました‼︎

出雲地方産フルーツは生産量が限られ、原価が高くなってしまうと思うのですが、それでもお使いになるのはどうしてですか?」

石田さん「家業を手伝っていた頃からお菓子に使うフルーツを作っている農家さんと交流があり、今でもそのお付き合いを大切にしているのですが、出雲地方の果樹農家さんと話をすると、フルーツの話をとても熱く語ってくださり、本当に一生懸命育てていらっしゃることが伝わってきます。そんな果樹農家さんが作られた出雲地方産フルーツをできるだけたくさんの人に知ってもらい、食べていただきたいとの思いがあるので、原価が高くなっても、そのフルーツを使ったタルトやオムレット、大福もちなどを作っています。

また、フルーツをなかなか食べない子どもさんもスイーツにするとぺろりと食べられたという話をよく耳にするので、スイーツがきっかけとなって地元のフルーツを好きになってもらえたらいいなとも思います」

あけみ「生のフルーツをお菓子に使うのはむずかしくはないですか?」

石田さん「フルーツは甘さも水分量も1つ1つ違うので、スイーツの形や味が思った通りにならないことがほとんどです。何度も何度も作り直した挙句、没にすることも多くあります。次はこんなスイーツを作りたい!と、イメージを思い描くのは楽しいのですが、そのイメージを実際のスイーツに落とし込むのは大変だと感じています」

あけみ「今後は、どんなスイーツを作っていかれますか?」

石田さん「当店のスイーツは、美味しさと同じくらい見た目の印象を大切にしているので、食べた人が友達などに見せたくなるようなインパクトのあるものを作っていきたいと思っています。

また当店では、めずらしい果物にも着目しており、夏には、今年初めて市場に出回った島根のぶどう『神紅』を使ったタルトを販売していました。これからの季節は西条柿の干し柿が美味しくなります。干し柿はバターとよく合うので、干し柿を使った美味しいスイーツを考えているところです」