県内シェア35%の養鶏場(2021年3月発行)

今は高校生になった息子がまだ小さかった頃、お店で「プリンが食べたい」と言うので、私はあるプリンを手に取りました。その頃、私は息子に食べさせるものの原材料を必ず裏ラベルでチェックしていましたが、手にしたそのプリンの原材料は、卵と牛乳と砂糖のたった3つだけ。購入して食べてみると「一体どうやったら3つの材料でこんなにおいしいプリンが作れるの?魔法みたい!」と感動しました。そして、この安全・安心で、みんなが喜ぶおいしいプリンを作ってくださっている会社に信頼の気持ちが芽生えました。今回は、そのプリンを作っていらっしゃる大田市にある旭養鶏舎を、弊社社長・吉岡と共に訪ね、竹下 正幸 会長にお話を伺いました。


吉岡「こちらの卵は県内シェアが35%もあるそうですが、いつから今のような規模の大きな養鶏場になったのですか?」
竹下会長「私が昭和45年にこの養鶏場を母から引き継いだ時には県内でいちばん大きい養鶏場で、5千羽の鶏を飼育していました。しかし、数は多いけど中身が伴っておらず、事業の立て直しをするため、農協から資金を借りて4倍の2万羽に増羽しました。利益を生むためには鶏の羽数を全国並みに増やしていかなければならなかったのです。以来、毎年増羽し、現在は33万羽を飼育しています。現在、鶏は人口1人に1羽といわれており、国民1人あたり年間333個ぐらいの卵を食べていただいていますが、私が子供の頃は家業が養鶏業でも卵を食べることはほとんどありませんでした。当時の卵は高価で、病院の見舞いや病気の方が優先して食べるという希少なものでした。ところが、高価な割に飼料代や販売価格が相場で変動し、利益が安定しませんでした。そんな業種で社員の皆さんに給料やボーナスをきちんと払い、休みをしっかりとっていただくためには、仕入れ先などの本来の仕組みを変えたり、いろいろな努力をしなければなりませんでした。ここまで来るには、大変なことがたくさんありました。昭和時代には台風で鶏舎が壊れたことが何度もありましたし、平成元年には会社が火事になりました。鶏舎は大丈夫でしたが、養鶏場の心臓部で洗卵などをおこなうGPセンターの建物が焼けてしまいました。この時は仲間の養鶏家、関係者に助けてもらい立て直すことができ、仲間のありがたさが身に沁みました。それ以降も、卵を食べるとコレステロール値が上がるといったデマが流れたり、全国で起こる鳥インフルエンザの、今となっては間違った情報に翻弄され、その度に仲間と共に啓蒙活動を行なって誤解を解いたりしながら、何とかやってきました」
吉岡「仲間への感謝の思いがあるから、大変な中でも、いろいろなリーダーを引き受けて来られたのですね」

あけみ「養鶏をする上で大切にされていることは、どんなことですか?」
竹下会長「弊社では鶏が快適に暮らせることを最も大切に考えています。夏場は風が通って涼しく、冬場は暖かく、鶏が4時に起き20時に寝られるような、快適に卵を産める環境を大切にしています。それと同時に、鶏に与える餌をとても大切に考えています。例えば“ネッカエッグ”は、広葉樹の木酢液などから作られた“ネッカリッチ”を飼料に混ぜて与えた鶏の卵です。“ネッカリッチ”の効果で卵特有のニオイが減る上、鶏が健康になり良質な卵が産まれます。弊社では、与える餌や飼い方の違いにより品名を変えており、『ネッカエッグ』をはじめ『しまねのえごま玉子』『島根のこめたまご』『ネッカリッチ卵 平飼い卵』など、いろいろな種類の卵があります」

あけみ「『ネッカリッチ味鶏の炭火焼き』という製品もおいしくて、時々購入します。一般的に、産卵を終えた親鳥の肉は硬いというイメージがありますが、意外と柔らかくて驚きました。なぜ硬くないのですか?」
竹下会長「鶏が食べてきた餌により細菌数が少なく安全で、やわらかいお肉になります。刺身にしても食べられるお肉で、島根県内の料亭でちゃんこ鍋などに使っていただいたりもしています。鶏は捨てるところがない素晴らしい食材です。戦後、田舎では採卵のためにたくさんの家が庭先で鶏を飼っていました。その頃から、卵を産まなくなった鶏は人間の食となって一生を終えるという考え方がありました。私は、鶏が差し出してくれた命を大切に使うことが、一番の供養になると考えています。しかし今、養鶏場で飼育されている鶏のほとんどは、卵を産まなくなると産業廃棄物などとして処理されます。弊社では卵の時から大切に育て、頑張って卵を産み続けてくれた鶏が産業廃棄物などとして一生を終えるのはあまりにもかわいそうだと思い、食用肉に加工してくださる会社を探しました。ある時、九州の食品会社との良い出会いをいただき、以来ずっと肉の加工をお願いをしています。一旦役目を終えた鶏を乗せたトラックが九州へ向かって出発する時には、社員たちは『本当にありがとう』という思いで、トラックが見えなくなるまで送っています」

会長のお話は1つ1つの言葉に温もりがあり、あらゆることへの感謝の思いを感じました。私も感謝を忘れず生きていきたいと思います。(あけみ)

竹下会長は、島根県農業協同組合中央会会長や日本養鶏協会会長など、要職を歴任してこられたすごい方で、弊社社長・吉岡も大変尊敬しています。


自社で卵を孵し雛を育てるところからされています。

でつまんで持ち上げても崩れない『ネッカエッグ』。

旭養鶏舎は、卵を使った加工品やスイーツに力を入れていらっしゃいます。この3月には会社敷地内にある直売所がお洒落にリニューアルオープン!!新鮮な自社産卵を贅沢に使ったロールケーキやタルトなどの新スイーツがデビューするそうです。あさひ直売所/島根県大田市波根町205 TEL. 0854-85-9001
えごまの種を添加した餌を食べて育った鶏が産む『えごま玉子』。旭養鶏舎は「エゴマで卵アレルギーのない卵を作りたい」との思いで、島根大学との共同研究でこの卵を開発されました。糖尿病予防などの健康効果が人体介入試験により実証されています。