農業技術の進歩と未来(2021年7月発行)

今年も稲作のシーズンが始まりました。弊社は米作りを始めて2年目になります。いずれは有機栽培で米を作りたいという思いはありますが、まだ修行中なので、米作りに関しては今のところ化学肥料を使用しています。弊社はこれまでモロヘイヤもエゴマも有機栽培一筋で育ててきており、化学的な技術の進歩という意味では、縁遠い暮らしをしてきました。稲作を始めたことで化学肥料・除草剤の恩恵に預かってみると、それらを使う農業は「ラク!」というのが率直な感想で、化学的な技術はすごい勢いで進歩しているのだなと感じています。私は化学肥料、農薬、除草剤は使わない方が良いと考えています。けれど、“稲作”という日本国内で最も技術的に優れている農業を今時のやり方で行なってみると、それらについて詳しく知ることも大事だと思うようになりました。例えば、今の農薬は私が子供の頃の高度経済成長期、つまり昭和40、50年代に使われていたイメージの良くない農薬とは似ても似つかない、極めて安全性の高いものになっています。さらに、元々化学肥料は、即効性が高いなど能力的に優れていましたが、今のものは機能的な進歩がすごい。例えば、田植えから稲刈りまで120〜140日と言われていますが、田植えの時に一度だけ撒けば、180日間効果があるという化学肥料もあります。それは、化学肥料の小さな粒の中に層があり、30日ごとに1つの層が溶けていくというしくみです。数年前までの化学肥料は、効果が最長で60日でしたので、60日毎に肥料を追加する作業が必要でした。今では、田植え機が田植えと同時に化学肥料を、さらに除草剤も一緒に撒いてくれて、その効果が180日間効くわけです。つまり、人間は田植えをすると稲刈りまで、水の管理だけを行なえばいいのです。「すごい進歩だ!これはラクだ!」と驚嘆しています。とはいえ、耕作放棄地対策の地域貢献として行なっている稲作はラクにこなしても、本業のモロヘイヤやエゴマの栽培まで妥協するわけにはいきません。ただ一方で『スマート農業』※と呼ばれる次世代型の農業には注目しています。ロボットによる省力化やデータ分析による収量や品質の向上は、有機栽培であっても取り入れていくべきことです。弊社では農業ハウスでの育苗に一部、スマート農業を導入をしていますが、今後はGPSが搭載された、限りなく自動運転に近いトラクターなども導入したいと考えています。「きつい」「きたない」「危険」の“3K職場”のイメージが今でもある農業界ですが、進化した技術を的確に導入していけば、若者も働きたくなるスマート職場に変化していくのではないかと、そんな期待が膨らみます。
『スマート農業』:ドローンやロボット、AI(artificial intelligence:人工知能)、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)など、先端技術を活用する農業のこと。